政治について思うこと6
2016年11月にアメリカ次期大統領として、共和党のドナルド・トランプ氏が国民投票によって選ばれました。
衝撃的ではありましたが、今後の世界がどうなっていくのかや日本が取るべき対応などを考えてみたいと思います。
■なぜトランプ氏が大統領になれたのか
ドナルド・トランプ氏と言えば、暴言や差別発言で問題視されていましたが、なぜこのような人物が大統領になれたのでしょうか。
答えは単純ではありませんが、ニュースでも報道されているように、アメリカ国民の多くが現在の政治に不満をもっており、また貧困層の人たちはトランプ氏がアメリカ経済を回復させてくれるのではないかという期待があったようです。
トランプ氏は不動産会社を経営して大成功をした人物であり、確かにビジネスでは有能な人物とは思います。
またテレビ番組の司会者などもしていたことから、マスコミへのアピールや、自分のプロデュースなども得意だったようです。
ただ、トランプ氏の政策方針を聞いていても、とても世界にとって良い方向に行くものとは思いませんでした。
アメリカ国民にとっては、経済が良くなる政策もありますが、他国の利害を無視する政策によって世界に損害が出れば、いずれはアメリカ経済にも被害が及ぶのは明確です。
つまり、政治に関しては素人であり、とても頭の良い人物とは、少なくとも私には思えませんでした。
自分に政治の知識がなくとも、側近に政治に詳しい人物がいれば問題はないのですが、彼の独裁的なやり方では、それも機能するか疑問です。
このような人物が大統領になってしまっては、アメリカ国民が後悔し、支持率が低下するのも、それほど時間はかからないでしょう。
ただ、トランプ氏の大統領当選については、時勢の流れから、ありえない話ではないと思っていました。
これについては、民主主義とは何なのかで書いた通り、民主主義は多数決主義なのですが、頭の良い人はごく少数派でしかないからです。
逆に、ヒラリー・クリントン氏が次期大統領に選ばれていれば、アメリカ国民も捨てたものではないと思っていたところです。
先日のイギリス国民投票によるEU離脱もそうですが、各国の国民や政治家たちが自国や自分たちのことばかり考え、周囲への影響の配慮をしていないような言動が目立ちます。
このままこのような状態が続けばどうなるのかと言えば、戦争が起きる可能性が高くなるということです。
例えば、空腹の人たち中に1つの食べ物しかなかった時、みんなが自分のことしか考えなければ、奪い合い、争いが起こります。
しかし、みんなが相手を思いやってゆずり合い、分け合えば決して争いは起きません。
昨今の不況のせいで、自分のことしか考えない人たちが増えていますが、各国が他の国のことを何も考えないような状況が続けば、第三次世界大戦が起こるのも遠くないと言えます。
みんなが視野を広げ、他人を思いやり、他の国のことも考える心の余裕が必要だと私は思います。
■アメリカのTPP離脱
トランプ氏は、大統領に就任したら、直ちにTPPから離脱すると公約しています。
TPPについては、他の記事やネットで調べていただければと思いますが、この決断はアメリカ国民にとって一部メリットはあっても、他の国にとっては大きな損害となります。
日本でも、TPP参加への賛否は非常に議論されており、現在参加に向けて一部関税をかけるなどの交渉をしている最中のことでした。
TPPに参加するのは、貿易を活性化し、自国にとっても貿易国にとっても、経済的効果を得るというWin-Winの関係を作るためです。
今まで様々な国とさんざんそういった交渉を重ねてきたのに、いきなりTPP離脱というのは、あまりにも乱暴すぎると言わざるを得ません。
確かに、TPPに参加しないということは、貿易で自由に関税をかけられ、他国の安い商品を高くして、自国の商品の消費を助ける効果があるため、メリットもあります。
しかし、自国の輸出する企業にとっては、輸出先で関税がかかってしまうため、売れなくなってしまいます。
それをなるべくなくすというのがTPPではありますが、これを問答無用で離脱することにより、Win-Winどころか、Loss-Lossの関係となってしまう可能性もあります。
例えば、車については、日本車は安くて性能が良いのに、関税のせいでアメリカで高くなってしまいますが、アメリカ産の車は高くて性能もそれほど良くないものが多いため、結局、輸入車を安く変えないアメリカ国民が苦しむことになりかねません。
日本にとっても、アメリカで日本車があまり売れなくなるので、Loss-Lossとなります。
大豆などの農産物も、アメリカ産のものに日本で関税がかかるため、高くて日本ではあまり売れなくなります。
こういった損失をなくすために、TPPができたわけです。
関税が全くないと、安い輸入品が入ってくることで、国内の生産物が売れなくなるデメリットがありますので、これを調整するために一部低い関税をかけるなど色々と交渉し、Win-Winの関係を築こうとしていたのですが、アメリカのTPP離脱により、TPP自体に崩壊の危険が出てきてしまいました。
こうなってくると、日本も早めに手を打っておいた方が良いかと思います。
例えば、中国を主体とするRCEPという、TPPと同じようなもので別の国が行っているものがあるのですが、TPPとRCEPを合併させてしまい、アメリカ抜きで貿易経済連携をするのが最も良いかもしれません。
ただ、日本主体では決められないことですので、中国や他の各国に呼びかけて連携をする必要があり、道のりは困難なものかと思いますが、このままTPPが崩壊してしまうよりはマシでしょう。
トランプ氏が大統領になることにより、様々なものが崩壊していく危険がありますので、これに備えておく政治手腕が日本や他の国にも問われることになるかと思います。
■米軍は日本から撤退するのか
もう一つ、日本にとって大きな問題が、日本駐留米軍への軍事費です。
トランプ氏は日本が、日本駐留米軍の軍事費を全額支払わなければ、米軍は日本から撤退すると言っています。
これはビジネス的な要求であり、本当に撤退するつもりはないのに、日本からの軍事費の支払い額を上げようとしているようです。
ただ、日本は思いやり予算などもあり、米軍に対して、他国の駐留米軍よりもはるかに高い軍事費をすでに支払い続けています。
トランプ氏はあまり歴史を知らないようで、日本が一番軍事費を支払っているのに、さらに増額を要求してきているのです。
また、トランプ氏は米軍が日本を守っていると発言していましたが、それは名目であり、元々は日本やドイツなどの第二次世界大戦の敗戦国が反乱を起こさせないためと、北朝鮮や中国、ロシアなどが戦争を起こした際に、アメリカが拠点として利用するためです。
さらに、日本に米軍基地があることで、下手に北朝鮮や中国などの国が戦争を起こせないという抑止力にもなっています。
ただ、トランプ氏が大統領になり、軍事費の増額を要求してくるのであれば、日本としては良い機会なのかもしれません。
もちろん、増額に応じるということではありません。
そろそろ日本も、アメリカの属国のような支配を抜け出すために、米軍に撤退してもらった方が良いのではないかと思うのです。
自分の力で自分を守るというのが、私の持論でもありますので、日本は自衛隊のみで日本を守るようにするということです。
トランプ氏の要求をはねのけ、その交渉を逆利用して、米軍に撤退してもらい、自衛隊のみで日本を守るという形にするということですが、日米安保条約があるので簡単にできる話ではありません。
それに、米軍が撤退してしまったら、停戦中だった北朝鮮が韓国を攻め出し、中国とロシアを後ろ盾に日本まで攻めてくる危険もあります。
ただ、現在アメリカに支払っている軍事費が結構膨大な額ですので、これをまるまる自衛隊につぎ込めば、自衛隊が強化されるのもそれほど時間はかからないと思います。
なので、日米安保条約を見直し、自衛隊を強化させつつ、徐々に米軍に撤退してもらうというのが良いかもしれません。
簡単な道のりではないのですが、自国の力のみで自国を守るというのは、本来の姿かと思いますので、米軍が日本を守ってくれているという固定観念にとらわれず、改善の道を探していく必要があるのかと思います。
トランプ氏が大統領となることで、間違いなく様々なものが変わっていくとは思いますが、良い方向に行くとは思えませんので、各国が対応を迫られることになるでしょう。
トランプ氏は、社長の経験とエンターテイメントの実績もあることから、直接対談などでは丸め込まれていまう可能性が高いです。
これに騙されることなく、冷静かつ的確に対応をしていくことが必要となります。