最低賃金は上げた方が良いのか
景気回復のためには賃上げをしろとか、最低賃金を上げろなどの意見をよく聞きますが、賃上げをすれば景気が良くなるのでしょうか?
■経営者目線で考える
「あなたが経営者だったとして、賃上げをするためのお金を捻出するためにはどうすれば良いですか?」
と経営者でない人に聞いても、
「人を減らして人件費を削減する」
と答える人が多いようです。
もちろん「売上を上げるために新しい計画を考える」、「企業努力をして経費削減をする」などの答えもありますが、最も手っ取り早く、確実に効果を出せるのは、人件費削減となります。
つまり、賃上げをするために人を削減し、少数精鋭で会社を運営していくところが増えることになります。
そうなると、会社に残った人も大変になりますし、失業率も増え、返って景気が悪くなる可能性が高まります。
また、日本人の性格として、今まで育ててきた社員を、リストラしてクビを切るということを平気でできる経営者や人事担当も少ないと考えられます。
そうすると、なるべく多くの社員で、賃金を安くして運営するという傾向になります。
そのため、なかなか賃金を上げられないのです。
■最低賃金を上げて良いのか
最低賃金は、非正規雇用つまり契約社員やアルバイトなどの時給の最低を決めることで、地域によって差があります。
地域によって差があるのは、人口の大小の違いがあるので、物価にも差が出てくるためです。
最低賃金を上げろという意見も多々ありますが、最低賃金が上がることで賃上げをしなくてはならなくなる企業は、上で書いたように、人を切らざるを得なくなってきます。
そうして非正規雇用で働くこともできなくなってしまったら、餓死するか自殺するしかなくなる人も出てきてしまいます。
韓国では、最低賃金を上げ続けているのですが、その結果、失業率も自殺者数も増え、景気も良くなってはいません。
生活ができる最低限の賃金は必要ですが、最低賃金を無理に上げても景気回復の効果はなく、デメリットの方が多いのです。
■賃上げの効果
賃上げをすれば、社員がやる気を出してくれるので、会社としてはメリットもあります。
しかし、今の日本では景気が悪いので、ほとんどの中小企業で賃上げができていません。
賃上げができるのは、ごく一部の儲かっているところだけでしょう。
また、賃上げができる企業であっても、税金や健康保険、年金などが年々高くなっているので、多少賃上げしても相殺されてしまうという意見も多いです。
こういったことから、日本の将来が悲観され、今後も不況が続くだろうとほとんどの経営者が考え、賃金を上げられないという状況になっています。
経営者としては、賃上げをしてあげたいのですが、国がそれを邪魔しているとも言えるでしょう。
■大手の内部留保
ただ、大手企業が大金を抱え込んでいるのも事実です。
大手企業が新規事業や経費などでどんどんお金を使ってくれれば、市場も中小企業も潤うのですが、上でお金を留めてしまっているところが多いために、下までお金が回らないという状況はあると思われます。
もちろん、大手も無意味にお金を使わないわけではなく、今後の不況を見越してという面もあります。
大手ほど社員が多いわけですから、コロナ規制の時のように、景気が悪化すれば、内部留保から給料を出して凌がなければならないからです。
とは言え、お金のほとんどが大企業や富裕層が抱えているというデータも出ているので、何とかしなくてはなりません。
何とかするには、法人税や所得税などの直接税の累進課税を変えて、お金持ちからたくさん税金を取るようにすることです。
日本が高度成長期の頃は、お金持ちからかなり取っていたようなのですが、批判があったために富裕層の法人税や所得税の税率は、その時よりかなり下げられています。
が、今は戦後最悪とも言える不景気ですので、大手企業や富裕層の方にたくさん税金を払ってもらった方が、景気も回復する可能性は高くなるでしょう。
消費税は、貧困層が苦しむ税金ですので、こちらを上げるのではなく、むしろ消費税は下げて、直接税の累進課税を変えるというのが、最も良い景気対策かと思います。