源義経はなぜ頼朝と戦わなかったのか

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※この記事は過去の記事からの再掲載となります。

 

■源義経は頼朝と戦おうとしたのか

源平合戦では、平家に対して源頼朝が挙兵し、弟の義経を西に派遣することで平家を滅亡させました。
その後、義経は兄頼朝に追われる身となり、奥州で藤原氏の裏切りに遭い、自害したのは有名な話です。

疑問が残るのは、源義経は兄と戦おうとしたのかということです。

平家を滅亡させて、当面は平和になったかと思われます。
しかし、兄の頼朝は力をつけた義経の謀反を恐れ、義経を討伐しようとします。
頼朝としては、この判断は仕方なかったと言えるでしょう。

平家討伐戦で、梶原景時という頼朝の家臣を、軍師として義経に同行させたのですが、義経は梶原景時の進言を全て退け、自らの計略を用いてことごとく勝ちました。
無視されたと同時に恥をかかされた梶原景時は、義経を恨み、鎌倉に帰った後、義経に謀反の疑いがあると、頼朝に諫言しました。

兄の頼朝がこれを信じたかどうかは分かりませんが、義経に二心がなかったとしても、義経を放っておくわけにはいかなかったと考えられます。
既に義経は、横暴を振るった平家を討伐した英雄となって、京では大人気となっており、さらに天皇から直接昇進を受けています。
本来であれば、官位については、兄の許可を得て昇進を受けるのが通常の手順なのかと思われますが、勝手に官位を受けた義経に、頼朝が怒りを抱くのは仕方なかったとも言えるでしょう。

平家討伐時に、頼朝が鎌倉にじっとしていたのは、何も弟に平家討伐を全てまかせて、自分は遊んでいたというわけではありません。
弟の義経が平家討伐に失敗した時に備え、兵力を整え、内政にも勤しんでいたのです。

ところが、義経は予想以上に頭もよく、統率力も抜群だったので、負けることなく平家を滅亡させてしまい、頼朝が置いていかれた形になってしまったのです。
このため、頼朝が焦りを感じたのも無理はないでしょう。

義経に謀反の心がなかったとしても、放っておくと日本が東西に二分される可能性があり、安心して鎌倉に幕府を開くことができないと考えたのかもしれません。
頼朝が義経を排除するのは、天下泰平のためにも仕方なかったことと思われます。

一方の義経の気持ちがどうだったかの問題ですが、義経はあくまで平家討伐が目的であり、兄と争う気は毛頭なかったのかもしれません。
しかし、兄の刺客による義経暗殺未遂があり、返り討ちにしたのですが、兄が自分を殺そうとしていると分かってから、後白河法皇に奏上して源頼朝追討の院宣を得ています。

このことから、義経に兄と戦う気があったと考えられていますが、兵を集めようとした時に、既に梶原景時の手が回っていたのか、なかなか兵が集まりませんでした。
京にいる後白河法皇は、このまま義経が負けてしまい、頼朝から迫害を受けることを恐れ、手のひらを返して、今度は源義経追討の院宣を頼朝に出しました。
この後、頼朝は数人の家来のみをつれて、京を脱出し、逃げに逃げて奥州にたどり着くことになります。

ただ、義経が本気で兄と戦う気があったのであれば、少数の兵でも京で挙兵すれば、十分に勝算があったはずだということです。
あれだけ少数の兵でもことごとく平家を打ち破った義経ですから、多少の兵力差があったとしても、頼朝の軍勢などにそう簡単に負けることはないはずです。

では、なぜ京を脱したかという疑問が残りますが、やはり源義経追討の院宣が大きいのではないかと思われます。
これは天皇や京の人々を敵に回すという、いわゆる逆賊にされたということになり、自分が朝敵になってしまったという思いがあったのかと思われます。

本気で戦おうと思えば、奥州の藤原氏の協力を得て、奥州で挙兵することもできたはずですが、それもしませんでした。
天下を乱すことを恐れたというのもあるかもしれませんが、やはり自分が朝敵になってしまったという思いが強かったのかと思います。

義経の行動を見れば、それは明白で、義経追討の院宣を出されるまでは、兄の討伐の準備を進めていましたが、義経追討の院宣が出されてからは、覇気を失ったように逃げる人生に転じています。
それだけ朝敵になるということがつらかったのかと思われます。

判官贔屓(ほうがんびいき。判官は義経の役職)という言葉もあるように、今でも源義経は英雄として語り継がれていますが、その人生は壮絶で悲しいものだったと言えるでしょう。
 



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