言葉を知る19
前回に続き、間違いやすい日本語などを少しご紹介させていただこうと思います。
■除菌、抗菌、殺菌、滅菌の違い
「除菌」というのは、菌などの微生物を取り除くということです。
菌を殺す場合もありますが、基本的に除去することを意味するので、「殺菌」とは異なります。
「抗菌」は菌の増殖を抑えることです。
菌が住みづらい環境を作ったり、菌を寄せ付けなくする場合に使います。
「殺菌」は文字通り菌を殺すことです。
少量の菌を死滅させただけでも「殺菌」と言いますので、「殺菌」をしたから菌がいない状態になっているわけではありません。
「滅菌」というのは、すべての微生物を死滅または除去した状態にすることです。
まったく微生物がいない状態を作るのは難しいですが、言葉の定義としてはそうなります。
いずれの言葉も、菌を減らすという意味ではありますが、100%菌がいない状態にするのは「滅菌」ということになります。
しかし、100%菌がいない状態にするのは非常に難しいですし、仮にそれができたとしても、人体に害が出てくる心配がありますので、注意が必要です。
別の記事に書いているように、潔癖症の方のようにあまり菌を避けすぎていると、免疫細胞が働かなくなり、免疫力が低下して風邪やコロナが重症化する危険がありますので、多少の菌などは気にしないようにしましょう。
■極め付け?
「極め付け」は間違いで、正しくは「極め付き」です。
「極み付き」も間違いです。
「極め付き」という言葉は、歌舞伎の世界から出てきた言葉で、演技などが高い評価を得て、世間に認められているというような意味となります。
似たような言葉に、「お墨付き」があります。
「お墨付き」は、師匠や権力のある人に認められているという意味です。
江戸時代頃に、権力がある人から、文書に「花押」という署名をしてもらって、認められたというところからきているようです。
ちなみに、「折り紙付き」や「太鼓判を押す」という言葉も同じような意味になりますが、これらは目上の人でなくとも構いません。
「折り紙」というのは、美術品などの鑑定書が付いているところからきた言葉のようです。
「太鼓判」は大きな判子のことです。
ややこしいですが、これを機会にしっかり覚えておいていただければと思います。
■一色多?
色々なものをまとめてしまうことを「いっしょくた」と言いますが、どのような漢字でしょうか?
「一色多」と書くような気がしますが、これは間違いで、正しくは「一緒くた」です。
「くた」というのは、がらくたを指しているようで、がらくたなどとごちゃごちゃに混じった状態から、「一緒くた」という言葉になったようです。
PCやスマフォであれば、変換で漢字が出てくるので間違わないとは思いますが、語源などもまとめて覚えておきましょう。
■確信犯の意味
「確信犯」というと、わざと嫌がらせのような行為をしている人を指す言葉だと思っている方も多いかもしれませんが、これは少し意味が異なります。
正しくは、自分は正しいと思って間違ったことを行う人のことです。
つまり、わざとではなく、自分が正しいと「確信」している人という意味です。
ただ、この言葉を正確に認識している人が少ないかもしれないので、使う時は十分に注意する必要があるかと思います。
■汚名挽回?
今さら言うまではもないことかもしれませんが、自分の失敗を取り戻す時に「汚名挽回」と言うのは間違いです。
「名誉挽回」と「汚名返上」が混同されているものと思われます。
「挽回」は取り戻すという意味なので、「汚名挽回」と言ってしまうと、「汚名」つまり不名誉で汚された名前を取り戻すという意味になってしまいます。
取り戻さなければならないのは「名誉」なので「名誉挽回」、汚された名前は返さなければならないので「汚名返上」になります。
ご存知だった方も多いとは思いますが、念のため確認しておいてください。