言葉を知る16
前回に続き、間違いやすい日本語などを少しご紹介させていただこうと思います。
■眉をしかめる?
「○○をしかめる」の○○に入るのは、眉でしょうか?それとも顔でしょうか?
「眉をしかめる」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは間違いです。
しかめるのは「顔」です。
「しかめっ面」という言葉もあるように、「顔をしかめる」が正解です。
「眉」は「ひそめる」です。
「しかめる」というのは、不快や苦痛の気持ちを顔に出すことで、眉にしわを寄せた状態を言うので間違いやすいものと思われます。
「顔をしかめる」と「眉をひそめる」はセットで覚えておきましょう。
■味あわせる?
「地獄を味あわせてやる」という言い方がありますが、厳密に言うと、こちらは間違いです。
「味わう」のように、「味」の後には「わ」がくるのが正解なので、正しくは「地獄を味わわせてやる」になります。
「味あわせる」では、「味を合わせる」の意味になってしまいます。
ただ、「味わわせる」と書くのは少し違和感がありますし、言いにくいという理由もあり、「味わせる」でも正しいとする辞書もあります。
難しいところではありますが、間違いたくないのであれば、「味わわせる」を使うのが無難となりますので、覚えておいていただければと思います。
■檄を飛ばす
「檄を飛ばす」という言葉をたまに聞きますが、これはどういう意味かご存知でしょうか?
よく、「人を励ます」とか「元気づける」という意味で誤解している方がいらっしゃいますが、こちらは間違いです。
「激励」の「激」と勘違いしてるのかと思われますが、「激」ではなく木偏の「檄」です。
三国志好きの方ならご存知かと思いますが、「董卓討伐のために、曹操が各地に檄文を飛ばした」という話が出てきます。
この「檄文」というのが、「檄を飛ばす」の「檄」です。
木偏なのは、昔の人が木の立て札や、紙の代わりに木の板に文書を書いていた名残で、「檄を飛ばす」は「自分の思いを文書に書いて、仲間を募る」という意味になります。
現代ではあまり使うことはないかもしれませんが、たまに聞く表現ですので、意味は覚えておくと良いと思います。
■同音で意味の異なる漢字
以前も書きましたが、続きとして、同音で意味の異なる漢字を少しご紹介させていただきます。
「合う」、「会う」、「遭う」、「逢う」の違いは、「合う」は物と物が合わさる時、「会う」は人と人が会う時、「遭う」は災難や敵など嫌な人や物事に遭った時、「逢う」は人と会うと同じですが、恋人など好きな人に会う時に使う場合が多いようです。
「観賞」、「鑑賞」の違いは、「観賞」は見て楽しむことで、「鑑賞」はそれ以外の芸術などを楽しむ場合に使います。音楽は「鑑賞」になりますが、映画の場合は「観賞」と「鑑賞」のどちらも使います。
娯楽映画の場合は、「映画観賞」となりますが、芸術映画は「映画鑑賞」となります。とは言っても使い分けるのは難しいと思いますので、迷ったら「映画鑑賞」の方を使っておけば良いかと思います。
「犯す」、「冒す」、「侵す」の違いは、「犯す」は罪やルール違反などやってはいけないことを犯した時、「冒す」は冒険など危険を冒す時、「侵す」は領土やテリトリーに侵入した時に使います。
「伯父」、「叔父」の違いは、「伯父」は親の兄、「叔父」は親の弟に使います。同様に「伯母」は親の姉、「叔母」は親の妹に使います。父親か母親かで変わることはありません。
「仇」、「敵」の違いは特になく、どちらも同じ意味ですが、「目のかたきにする」は「敵」の方を使うようです。
ただ、「敵」ては「てき」とも読めるので、「仇」を使う方が無難かと思います。
「書く」、「描く」の違いは、「書く」は文を書く時、「描く」は絵を描く時に使います。
「断つ」、「絶つ」、「裁つ」の違いは、「断つ」は逃げ道を断つなど分断する時に使い、「絶つ」は消息を絶つなど、連絡や流れなどが途絶える時に使います。「裁つ」は布を裁断する時に使います。
「思う」、「想う」の違いは、「思う」が考える時、「想う」は誰か好きな人など感情を込めて考える場合に使います。
「乗せる」、「載せる」の違いは、「乗せる」は乗り物に乗せる時、「載せる」は雑誌など紙面に載せる場合に使います。
「上げる」、「挙げる」、「揚げる」の違いは、「上げる」は高い位置や水準に上げる時に使い、「挙げる」は証拠や名前を挙げるなど列挙する時に使いますが、手を挙げる場合もこちらを使います。「揚げる」は凧を揚げる場合や、油で揚げ物を揚げる場合などに使います。
「止める」、「辞める」の違いは、「止める」はしていたことを止める時、「辞める」は職務から離れる時などに使います。退職する場合は「仕事を辞める」と書きますが、仕事を切り上げる場合は「仕事を止める」と書きますので、注意してください。
「停める」、「泊める」、「留める」、「止める」の違いは、「停める」は乗り物を停める時、「泊める」は宿に人を泊める時、「留める」は心に留めるなど注意をする時、「止める」は動きや流れを止める時に使います。
「攻める」、「責める」の違いは、「攻める」は敵を物理的に攻撃する時、「責める」は責任や過ちを追及する時などに使います。
「過ち」、「誤ち」の違いは、「過ち」は過失など大きな失敗に使い、「誤ち」は誤字など小さな間違いに使います。
日本語は同音で意味の異なる漢字が非常に多いですが、他にもあればまた別の機会にご紹介させていただこうと思います。