言葉を知る9
前回に続き、間違いやすい日本語などについて、少しご紹介させていただこうと思います。
■辛党とは何か
甘いものが好きな人を「甘党」と言いますが、「辛党」とはどういった人のことを言うか、ご存知でしょうか?
文字通りなら辛いものが好きな人のことかと思ってしまいますが、実は「辛党」は辛いものが好きな人のことではありません。
「辛党」というのは、お酒好きな人のことを言います。
お酒が辛いという意味ではなく、「甘党」に対して「辛党」という言葉ができたと言われています。
元々、「甘党」の意味としては、お酒よりも甘いものが好きという人のこと言っていました。
これに対して、甘いものよりもお酒の方が好きという人を、「甘党」に対して「辛党」と言ったことから、この言葉が生まれたと言われています。
まぁ、「辛党」が辛いもの好きという意味でも問題がないような気もしますが、本来の意味としては「辛党」はお酒好きな人を指しますので、覚えておきましょう。
■穿った見方
「穿った(うがった)見方」という言葉をよく聞くかと思いますが、こちらの意味を勘違いしている人も多いようです。
「穿った見方」というと、偏った見方という意味と思ってしまう人が多いと思いますが、実は違います。
「穿った見方」は、本質を突いた見方という意味になります。
語源としては、「穿つ」という言葉が「穴をあける」とか「貫き通す」という意味があり、転じて「物事を深く掘り下げる」という意味となり、本質をついているという意味になったのかと考えられています。
恐らく世間一般的な意見に対して、本質を突いた人の意見を「穿った見方」と言っていたところ、普通の人よりも変わっていると思われてしまい、これが勘違いの原因となっているのかと思います。
勘違いしている人が多いと思うので、間違えないように覚えておきましょう。
また、この言葉を使う時は、相手も勘違いする場合があるので、「穿った見方をするね」と言うよりも、「本質を見抜いているね」という言い方をした方が良いと思います。
■なし崩し
「なし崩し」という言葉は、どういう意味がご存知でしょうか?
こちらも勘違いしている人が多いようで、
「君のおかげで、この問題をなし崩しに片付けられたよ」
というような使い方をしている人もいらっしゃると思います。
しかし、「なし崩し」という言葉は、「一気に」とか「少しずつ崩す」といった意味ではありません。
「なし崩し」というのは、正しくは、「少しずつ借金を返済する」という意味です。
つまり本来は、借金を少しずつ返す時にしか使えないという言葉なのです。
状況として、借金を少しずつ返すさまが、問題を少しずつ解決するというところから勘違いされているのかと思います。
まぁ、意味的には通じる場合が多いので、問題がない場合もあるかもしれませんが、本来の意味は覚えておいた方が良いでしょう
■知恵熱
「知恵熱」という言葉も間違いが多い言葉です。
「今日は頭を使いすぎて知恵熱が出たよ」
という使い方をよく耳にしますが、こちらは間違いです。
「知恵熱」は、知恵を出して頭が痛くなるというような意味ではありません。
「知恵熱」というのは、赤ちゃんが突然発熱することを言います。
赤ちゃんが急に知恵をつけて熱を出したのではないかと思われて「知恵熱」という言葉が生まれ、このことから、頭を使って頭痛を起こすことを「知恵熱」と言うと勘違いされたのかと思われます。
こちらも、間違って使っても問題がない場合が多いですが、本来の意味は覚えておきましょう。
■嫌いじゃないは好きのこと?
「嫌いじゃない」と言われると、好きという意味と思う人も多いと思いますが、「嫌いじゃない」=「好き」とは限りません。
物事に対しての興味の段階を、例えば、
・興味がない
・大嫌い
・嫌い
・普通
・好き
・大好き
のように分けると、「嫌いじゃない」という表現は、上の「大嫌い」と「嫌い」を否定しただけと思われ、「好き」とは限らないということになります。
「嫌いじゃない」と言われた場合、必ずしも「好き」というわけではなく、「好き」でも「嫌い」でもない場合の「普通」があるということです。
また、「興味がない」人であっても、「嫌いというわけではない」と言う場合があります。
この場合、嫌いというわけではないが、どうでも良いということだと思います。
もちろん、「好き」「嫌い」だけのことではなく、「おいしい」「まずい」、「良い」「悪い」などほとんどの形容でも同様です。
これは結構重要なことですので、覚えておきましょう。