言葉を知る5
前回に続き、間違いやすい日本語についてなど、少しご紹介させていただこうと思います。
■えばるという言葉はない?
「いばる」という意味で、「えばる」という言葉を使っている方がいらっしゃいますが、「えばる」というのは少し違和感があります。
「いばる」というのは偉そうにするという意味ですが、「いばる」を漢字で書くと「威張る」と書きます。
文字通り、威を張るということです。
威というのは、勢いとか態度などが強いという意味の言葉です。
「虎の威を借る狐」ということわざは、虎の持つ人を恐れさせるような態度を、自分のもののようにして狐が虚勢を張るという意味ですね。
この「威」を張るから「威張る」であって、「えばる」というのは、地方のなまりでしょう。
「えばる」と言ってしまっても、意味は通じますが、あまり格好の良いものではありませんので、「いばる」と読むようにしましょう。
■気が置けないの意味は?
「気が置けない」という言葉をあまり使わないかもしれませんが、もし他人が使った場合に、勘違いしやすい言葉ですので、間違えないように注意しましょう。
友達が「お前とは気が置けない仲だな」と言ってきた場合、どういう意味で認識しますでしょうか?
この場合、油断できない人と思われている、という意味でとらえていらっしゃる方が多いようです。
しかし、それは間違いで、正しくは仲が良いという意味です。
解釈としては、気を遣う必要のないくらい仲が良いとなり、何でも包み隠さず話せるくらい親しいというような意味になります。
「気が置けない仲」という表現をするので、分かりにくくなっていますが、「気を置く必要がない仲」と変換すると覚えやすいかと思います。
まぁ、自分がこの言葉を使うとしても、相手に間違って解釈されてしまう可能性も高いので、あまり使わない方が良いかもしれませんが、他人が使ってきた場合に間違えないためにも、覚えておいた方が良いでしょう。
■情けは人の為ならずの意味は?
こちらもあまり使わないかもしれませんが、「情けは人の為ならず」という言葉があります。
これはどういう意味かご存知でしょうか?
情けをかけるとその人の為にならない、という意味で覚えていらっしゃる方が多いようです。
しかし、これも間違いです。
正しくは他人に情けをかければ、めぐりめぐって自分の為になるという意味です。
まぁ、その人の為ではないという意味では間違っていないのですが、他人に情けをかけるのは自分の為という意味になるので、間違えないように注意しましょう。
解釈としては、他人の為に同情したり、恩を売っておくと、見返りがあったり、自分自身の評判が上がるなど、自分に良いことが起こるということです。
こちらあまり使う機会はないかもしれませんが、日本人の精神としても美しいものですので、覚えておきましょう。
■屈辱と雪辱
「雪辱を晴らす」という言葉は、使い方として合っていますでしょうか?
「雪辱を晴らす」というのは、実は間違いです。
雪辱というのは、屈辱を雪ぐという意味で、雪ぐというのは、取り除くという意味になります。
それをさらに晴らすというのは、「頭痛が痛い」のような重複言葉になってしまいます。
正しくは、「雪辱を果たす」です。
「晴らす」を使いたい場合は、「屈辱を晴らす」という表現になります。
以前、このサイトの雑学の記事で重複言葉を少しご紹介しましたが、この重複言葉は漢字が重複しているわけではないので、少し分かりづらい重複言葉かと思います。
ただ、混同してしまいがちな言葉ですので、こちらも間違えないように覚えておくと良いかと思います。