言葉を知る3
前回に続き、間違いやすい言葉などについて、ご紹介させていただこうと思います。
■足をすくわれると足元を見られる
間違いの多い言葉に、「足元をすくわれる」という使い方をされる方がいらっしゃいます。
少し考えていただければ分かると思いますが、正しくは「足をすくわれる」で、足元というのは足の辺りという意味ですので、足元をすくうことは物理的にはできません。
「足をすくわれる」という言葉は、足をつかまれて転びそうになるということから、手痛いしっぺ返しを喰らうという意味です。
「足元をすくわれる」という誤用は、「足元を見られる」と混同してしまったものと思われます。
「足元を見られる」というのは、昔、人を運ぶ籠屋さんがお客さんの足元が泥だらけなのを見て、料金を高く取られたというところから来ています。
足元が泥だらけということは、それだけ旅で苦労しているということであり、少々値段が高くても籠を使ってくれるだろうということです。
つまり、「足元を見られる」の言葉は、人の弱みにつけ込んで、ぼったくられるという意味です。
二つの言葉は、意味は全然違いますが、混同しやすい言葉なので、「足をすくわれる」と「足元を見られる」はセットで覚えておくと良いでしょう。
■間髪を容れず、間一髪、危機一髪
髪を使った慣用句は色々とありますが、こちらも読み方や漢字を間違えるケースが多いようです。
危機一髪(ききいっぱつ)は、ご存知の通り、すんでのところで危機を回避したという意味です。
「発」ではなく、「髪」ですので、間違えないように注意してください。
なぜ「髪」の字が使われるかと言うと、髪の毛一本の差で危機を回避したというほど、危なかったという意味からだそうです。
間一髪(かんいっぱつ)も、危機一髪とほぼ同様の意味で、こちらも髪の毛一本の差で間に合ったなどの意味で使用されます。
次に「間髪(かんはつ)を容れず」ですが、こちらは「かんぱつ」と呼んでしまう方がかなり多いので、注意が必要です。
意味としては、髪の毛一本の隙間も与えずにすぐという意味ですが、区切る場所としても、「間、髪を容れず」となります。
間に髪の毛一本も入らないという意味ですので、このような区切り方をします。
間髪という熟語ではありませんので、間違えないように注意しましょう。
また、「容れず」が正しい漢字表記ですが、「間髪を入れず」でも間違いではないそうです。
■三すくみと三つ巴
よく「三すくみ」のことを「三つ巴」と言ってしまう方を見かけますが、意味は異なります。
以前このサイトの雑学のところでも説明しましたが、三すくみというのは、じゃんけんのような関係で、AはBよりも強く、BはCよりも強いが、CはAより強いという関係です。
この三者が同時に出くわすと、獲物と天敵がそれぞれに存在しているため、すくんで動けなくなるというところから来ています。
三つ巴というのは、三者が並び立つという意味ですので、中国の三國志のように、魏、呉、蜀がそれぞれ拮抗して並び立っているような状態です。
この関係は、三すくみになっているわけではなく、三者にとって、他のものは敵というような関係です。
ゲームなどでも、よく三すくみのシステムが採用されますが、現実世界ではあまり三すくみという関係はなく、食物連鎖のように誰かが一番強いという関係になるか、三つ巴のように連立するのが普通かと思います。
ただ、言葉としては、三すくみと三つ巴は異なるものですので、こちらもセットで覚えておきましょう。
■日本語と英語の混同
スポーツニュースなどで、「日本チームがのベスト16(じゅうろく)に進出しました」という言葉を耳にしますが、非常に気持の悪い言葉です。
本来、ベストというのは、No1のことであり、日本語としても、最も良い、つまり1番のことです。
日本語では上位16位という意味のはずですので、ベストではなく、トップとするのが正しい表現かと思います。
同様にワースト4という表現も、本来はおかしな表現となります。
この場合は、下位4位となるので、ボトム4というのが正しい表現になるかと思います。
さらに、ベストは英語なのに、16(じゅうろく)は日本語というのも変と言わざるを得ません。
ベスト8(エイト)やベスト4(フォー)となると、全て英語にするのに、16だけ日本語読みにする意味がよく分かりません。
つまり、上記の例の正しい表現は、「トップ16(シックスティーン)」と言うべきです。
日本語で言うなら、「上位16(じゅうろく)位」となります。
まぁ、外来語については、日本独自の言葉になっているものもありますので、英語ではなく、日本独特の表現にしているというのであれば、それも仕方ないですが、やはりテレビのニュースなどでは正しい表現を使ってほしいものです。
■必殺技
ゲームなどでよく使われる「必殺技」という言葉ですが、これはあまり軽々しく使う言葉ではありません。
必殺技は、文字通り相手を必ず殺す技です。
単にダメージを与えるだけの技であれば、必殺技とは言いません。
技の種類には、奥義、秘技など、言い方は様々ありますので、そういった言葉を使用すべきかと思います。
まぁ、相手の心を折って立ち直れないようにするためという意味であれば、間違いではないかもしれませんが、いずれにしましても、言葉の意味をよく考えた上で、正しい言葉を使用していただければと思います。